12月の言葉 子どもたちは薔薇の花

園長 古川陽子

薔薇の木に 薔薇の花咲く なにごとの不思議なけれど

薔薇の木に薔薇の花が咲くのは当たり前のこと。薔薇の木に他の花が咲くことはない。自然の神秘や摂理をうたっていると解釈される北原白秋の詩です。
この詩を思い出したのは、日本初「お弁当の日」をつくった竹下和男先生の講演をお聞きしたからです。「お弁当の日」とは小学生が自分で食べるお弁当の、献立作りから買い出し、調理や片付けといった全ての工程を一人だけで行うという食育の取り組みです。涙がかわく間がないほど胸に迫る内容でしたが、特に強く心に残ったのは次の言葉です。
〜 人は置かれた環境に適応する 〜 一人では生きていけない子どもたちは、与えられた環境に適応するようにプログラミングされている。大学生にお袋の味は?と聞くと一位がマクドナルドだったが、これはその子たちが育ってきた環境に適応したまでのこと。掃除、洗濯、買い物、食事の準備…一日の大半を親は子どものために費やしている。その時間を嫌々ではなく「あなたのお世話ができて幸せ」という気持で楽しくできたら、子どもは生まれてきてよかったと思え、私もこんな親になりたいと憧れを持ち、実際に親になったときに同じように幸せな育児ができる。家の人に褒めてもらい、喜んでもらうことで脳の前頭前野が育ち、共感する力や意欲が育つ。人は置かれた環境に適応する。だとしたら、子どもがよく育つ環境を大人がつくればよいのだ。
“薔薇の木”という環境が“薔薇の花”を咲かせる。“薔薇の木”が子どもをとりまく環境だとするならば、子どもがどのように育つのかは環境次第だといっても過言ではないでしょう。そしてその環境をつくるのは私たち大人であり、子どもたちが過ごす一日一日であり、時間の過ごし方であり、衣・食・住なのだと思います。