「自分の満足を求めるべきではありません。おのおの善を行って隣人を喜ばせ、互いの向上に努めるべきです。」(ローマの信徒への手紙15:1)

チャプレン 司祭 八 木 正 言

 1968年のアメリカ大統領選、そのキャンペーン・スピーチで、ロバート・ケネディは語りました。世界一であるアメリカのGNP(国民総生産)の中に何が含まれ、何が含まれていないかを考えてみようと。
 例えば戦争で使用される武器や爆弾はGNPに計算されますが、子どもたちの健康や人々の思いやりは勘定されません。つまり「GNPの中から、わたしたちの生きがいがすっぽり抜け落ちている」と。
 私たちが求め続けてきた、経済的な豊かさを求める姿勢を保持したままで発展成長を考えるのではなく、スローでシンプルであっても、一人ひとりが幸せを感じることのできる社会づくり、これが今に生きる私たちの心に刻まねばならないキー・ワードなのだと語ったのです。
 時を隔て、ところ変わってブータンでは、前国王が提唱したGNH(Gross National Happiness)が世界から注目を集めました。これも経済的な豊かさのみを追い求めるのではなく、個々人が幸せを感じることができる環境作りをしようというものです。開発・近代化のみでなく、伝統文化や精神文化との共存を目指す独自の哲学・仏教がその背景にはあります。
 そこで思い浮かんだのが今日の聖書の言葉です。私の幸せ、私の豊かさ、私の安心を一生懸命求め続け、ある程度それらを手に入れることができた私たちは、それでも心が満たされなかった真実をしっかりと受け入れ、今こそ「隣人を喜ばせ、互いの向上に努める」価値観を身につけなければならないのではないでしょうか。
 そんな聖愛幼稚園であることを願いつつ、さぁ2学期スタートです!