【2月の言葉】 りんごは愛で育てる

 NHKの番組『プロフェッショナル』に木村秋則さんという青森のりんご農家の方が出演していました。木村さんのりんごはインターネットで発売すると10分で完売、腐らないそのりんごは奇跡のりんごと言われ、その栽培法も科学的に合成された農薬や肥料を一切使わない、不可能と言われた栽培法を実現したものでした。害虫駆除に大量の農薬散布が不可欠とされるりんご栽培で、農薬も肥料の使わない栽培が確立されるまでには壮絶な格闘の日々がありました。極貧と絶望の果てに死を決意し山に向かった木村さんは、そこで一本の木から栽培のヒントを教えられました。山の木は農薬を使わないのに害虫も病気も少ない。なぜだろうと掘り返した土は手で掘り返せる程やわらかで、無数の生物がその中で豊かに生きていることがわかりました。この土を実現すればりんごが実るのではないかと再び取り組んだ結果、8年目にして見事なりんごが実り始めました。


 人工的にりんごを育てるのではなく、りんごが本来持っている生命力を引き出し、育ちやすい環境を整えることを木村さんは「育てない、手助けするだけ」と表現します。また「私の栽培は目が農薬であり、肥料なんです」と言いながら、害虫の卵が増えすぎたと見れば手で取り、病気のまん延を防ぐためには、労力を惜しむことなく一本一本手作業で酢を散布する。木と対話しながら、慈しみながら栽培を続ける木村さんの姿を番組は「りんごは愛で育てる」と表現していました。


 木村さんが実践し続けている「愛で育てる」かかわりは、そのまま私たちの保育の営みに重ね合わされることばかりであるという気がしてなりませんでした。