求めなさい。そうすれば、与えられる(マタイによる福音書7:7)

チャプレン 司祭 八木正言

 ベルギーの名門チョコレートメーカー「ゴディバ」。そのシンボルマークは馬にまたがった裸婦であるのをご存知でしたか?
 この女性、実はイギリスで語り継がれている女性で、11世紀のイギリス・コヴェントリーの領主であったレオフリックの妻、その人です。
 コヴェントリーの人々は、レオフリックによる圧政に苦しんでいました。レオフリックの妻・ゴディバは人々のことを思い、何度も夫をいさめ、心を入れ替えてほしいと懇願しました。しかしレオフリックは妻の言うことを聞かないばかりか、度重なる忠告に嫌気がさし、彼女を黙らせようとある無理難題を突きつけたのです。それは、「裸で馬に乗り、街を巡回することができればお前の意見を受け入れよう」というもの。彼は、これなら妻も黙るだろうと考えたのでした。彼女は悩みます。しかし、それで住民たちを救えるのならと決断、「当日は外出せず、窓を閉めてください」と布告を出して、なんと本当に裸で馬に乗って街中を練り歩いたのです!
 現実的に考えて「それは無理だ」と自らリミッターをかけることはよくあります。しかしそんなとき、たとえ周囲がなんと言おうと、物理的な情況がどうであろうと、自分はそれをするんだ、乗り越えるんだという強い気持ち、すなわち信念があれば、もしかしたら自分の望んだ方向ではないかも知れませんが、でも道は拓けていく、そんなことをこの話は教えてくれています。
 ダメだ、無理だと嘆き立ちすくむ、そうしてリミッターをかけるしかないと思った時こそ「求める」「探す」「たたく」のだ、そう聖書は語ります。リミッターをかけるのではなく、強い信念をもって「求めなさい、そうすれば与えられる」のだと。