【5月の言葉】 人生の底支え

百花繚乱、花々が咲き競い、沈丁花の香り漂う春の穏やかな光の中で、子どもたちの元気な声が響き渡っています。進入園児たちも一日ごとにかかわりの範囲を広げ、お母さんがいない寂しさよりも、幼稚園であそぶ楽しさへ徐々に天秤が傾いているようです。

 日本で初めて子どものためのシェルターを設立した弁護士の坪井節子さんが、そこでの子どもたちとのかかわりを述べている文章を目にしました。そこに避難してくる子どもたちの多くは、これまで味わってきた悲惨な体験から、自分が生きていてもいいと思えなくなっています。そんな、自分の命が大切だと思えない子どもたちが、シェルターで暫く生活し、あたたかい言葉のシャワーをたくさん浴びながら、少しずつ自分の人生を肯定できるように変わって行きます。そこで子どもたちにかけられる言葉、それは、これまで聞かされることの無かった、3つの大切ないのちの言葉です。「ありのままのあなたでいい」「あなたはひとりぼっちではない」「あなたの人生はあなたのもの」。そして、これこそが、子どもたちが前を向いて生きて行くための「人生の底支え」となる言葉に他なりません。

坪井さんは、子どもたちのあまりに悲惨な現実を前に、自分の無力さに戸惑い苦悩しながら、これら3つの言葉を、子どもを生かす言葉として体得しました。そして後に、これらが教会で語られている言葉と同じであることに気づきました。坪井さんの言う、教会で語られ、また「人生の底支え」となる言葉、それは同時に、この聖愛幼稚園で語られ、繰り返し繰り返し、子どもたちにかけられる言葉のシャワーに他なりません。

たとえ、自分が人生の危機に直面することがあっても、或いはまた危機にある誰かの隣に居合わせることになっても、自分の、誰かのベクトルが、「死」ではなく「生」へと向かうための、まさに「人生の底支え」をこの幼稚園でできることを願っています。