【5月の言葉】となりのこいのぼり

幼稚園のこいのぼりは、運動会の万国旗のように横に連なっています。吹き流しや真鯉は大きくて地面に着いてしまいますが、手で触ったり、端を持って人力でそよがせたりできるので、かえって子どもたちには好評のようです。こいのぼりを見上げる子どもたちの瞳はどんな宝石よりもキラキラと輝いています。こいのぼりが風にそよぐ様子・チューリップの中の黄色い花粉・たんぽぽを摘んだときに茎からにじみ出る白くてネバネバしたもの・・・それらのものをジーッと見つめる子どもたちの瞳をみると、センス オブ ワンダー(自然の神秘に目をみはる感性)がしっかりと育まれていることを実感します。

宮崎駿監督の代表作“となりのトトロ”は多くの方がご覧になったことでしょう。登場する姉妹の名前〜サツキ(皐月)とメイ(MAY)〜は両方とも5月を意味します。そして映画の中の季節も5月なのだそうです。桜咲きだれもがウキウキ気分の4月を過ぎ、自然界もじっくりといのちの芽吹きや成長に本腰を入れ、草木は萌え、色とりどりの花々が咲き誇る5月。トトロたちに出会いやすいのも、そんな季節なのかもしれません。解剖学者の養老猛氏は、メイがチビトトロを発見しようとジーッと見つめているシーンを絶賛していたそうです。解剖を目指す学生は、ああいう目つきで物を見なければならないと、メイのポスターまで特注して東大の教授室に貼ったといいます。

この映画のキャッチコピー「このヘンないきものはまだ日本にいるのです。たぶん。」は糸井重里氏によるものですが、当初は「このヘンないきものはもう日本にはいないのです。たぶん。」だったそうです。宮崎監督の要請で前者に変更になったのですが、そこに監督の私たちに向けたメッセージと子どもたちに対する祈りにも似た希望があるように思えます。
子供たちの輝く瞳をみていて、なんだかとても愛しく、この瞳がくもらずに澄んだままでいられるよう祈らずにはいられませんでした。