【10月の言葉】心の中に大切にしまっておきたい出来事

幼稚園では「うんどうかいごっこ」がまっ盛り。どの子も一生懸命で久しぶりの“遊び”に夢中です。

ある団体競技でのこと。この競技はそれぞれのチームが、りんご・梨といった果物を書いた紙を腰から紐でぶら下げ、自分のものを取られないように、また相手のものは出来るだけ多く取るようにと走りまわり、相手チームの果物をどれだけ多く取ったかで勝敗が決まるものです。子どもたちが大好きな「しっぽとり」という鬼ごっこを先生がアレンジしてくれました。

ピーッ!という終了の笛の合図とともに、お互いの陣地にもどる子どもたち。数を確認するため、先生に一人ずつ持っているものを数えてもらいます。いくつも取れた子は満面の笑み。でも、小さい子も大きい子も一緒に楽しみますので、小さいお友だちの中には残念ながら、一つも取れなくて残念そうな子も…。
すると、一人の年中の男の子が、隣の小さいお友だちに「これ、いいよ。」と二つ持っていたうちの一つを手渡してくれたのです。その小さなお友だちはまだ幼すぎて何が起こったのかもわからず、「ありがとう」を言う余裕もありませんでした。

その場にいた大人としては、まして教師としては「○○くん、ありがとうって言おうね。」などとその場に介入すべきだったのかも知れません。ですが、自分のもっているものの半分を小さな子へあげたその子は、感謝されることを望んでしたのではなく、また、だれかにみせて褒められるためではなく、当然のこととして自然に行ってくれたのです。そこに介入することは、なんだかもったいないような気がして、そのまま見守ってしまいました。

早く走れる、高く跳べる、逆立ちができる…目に見える成果が大事なときもあるでしょう。でも、この幼稚園の子どもたちは「本当に大切なことは、目には見えないんだよ」と身をもって教えてくれている気がします。